The Idiot, the Curse, and the Magic Academy

Chapter 23



町の外には魔物がいるらしい。

「魔物って?」

「俺も学者じゃないから詳しくは知らんが、昔、この世界を作って移住した際に動物なんかも連れてきたらしいんだよ。もちろん、食うためにな」

「まあ、わからんでもない」

逃げてきたらしいが、食わんと死ぬしな。

「それで動物を町の外で飼ったり、生態系のために放したりしたらしいんだが、アストラルって魔力に満ちているから動物達が魔力を帯びて魔物化したんだよ」

進化かねー?

「魔物化って強くなったのか?」

「まあ、そんな感じ。だから町の外には魔物がいる。でっかい熊とか猪とか」

「へー……」

やれるか?

「そういうのを狩る仕事があるんだよ。肉を売ったりな。あと、森とかもあるんだが、そこで薬草なんかが採れる。動物だけじゃなくて植物も魔力を帯びて変わってしまったんだと」

「薬草? HPが回復するのか?」

「薬草はポーションの材料だな。そういう草だったり肉だったりが学園や工業区で売れる」

それがバイトか……

「儲かるん?」

「そこそこ儲かる。学費を払うためにそういうのを積極的にやる苦学生もいるし、外の研究をしている奴もいる」

「行ってみたいなー」

すごく気になる。

「さすがは脳筋」

「普通は魔物と聞いたら怖がるんだけどね」

まあ、不安がないわけではない。

「俺は一撃で熊を倒せるんだぞ」

「聞いた、聞いた」

「まあ、ジェニー先生のオートマタを一撃で粉々にするくらいだし、問題ないとは思うけどね。でも、外に行くには親と先生と生徒会長の許可がいるよ?」

そうなの?

「親と先生はわかるが、シャルも? なんで?」

「生徒をまとめるのが会長の役目だもん。順序を言うと、親から許可をもらって届け出を生徒会長に提出する。生徒会長が大丈夫だと判断したら先生に提出するって流れ。僕達の場合は担任のジェニー先生だね」

ふーむ……

シャルと先生は問題ないだろう。

問題は親が何て言うか……

「考えてみる。父さんと母さんがなー」

特に母さん。

あの人、戦いが好きじゃないもん。

「親御さんが反対するケースが一番多いね。武家の家とかだとむしろ、行けって言うだろうけど……」

セドリックがフランクを見る。

「言われるなー。俺もイルメラも行かされた。まあ、行きたかったから別にいいけどさ」

シャルも武家だし、言われているんだろうか?

無理じゃね?

「まあ、いいや。武器屋に行こうぜ。気になる」

「男の子だねー」

「まあ、上がろうぜ」

俺達は近くの階段を昇り、2階に行く。

すると、2階のフロアは確かに武器屋となっており、剣や槍、さらには斧から弓矢まで売っていた。

「すげー! 日本じゃ絶対に見ない光景だ!」

「ドイツもだよ」

「イングランドもだね」

当たり前か。

「銃とかはないの?」

「魔法使いは銃を嫌う人が多いな」

「あっちの世界の兵器は話題にしただけで怒る人がいるから気を付けて」

めんどくせーな。

「まあいいや。剣っていくらすんだろー?」

立てかけられているかっこいい剣を見てみる。

「げっ! 30万って……」

たけー!

「当たり前だけど、武器も防具も高いよ」

「剣は安物でも10万はするな……というか、お前、武器を使えるのか?」

武器……

「使ったことないな。俺の武術は格闘術だし」

包丁すら数えるくらいしか握ったことない。

「いらねーじゃん」

まあ、そうだけど。

「男子の憧れ」

「それはわかるけどよ……買うんか? お前の所持金なくなるぞ?」

それはなー……

「うーん……中古とかないんかね?」

「命を預ける武器だぞ? やめとけ」

確かに……

「でも、使ってみたいなー」

「使うくらいなら貸してやろうか? 俺、いっぱい持ってるし」

いっぱい?

「そんなに持ってんのか?」

「武家だからなー。漫画買ってくれって言っても買ってくれんが、武器買ってくれは買ってくれる」

値段が全然違うのに……

「買ってもらった武器を売るとかどうだ?」

「それをやって、親父にこれでもかってシバかれたのがウチの兄貴だな……」

怖っ。

「ふーん……じゃあ、貸して」

「別にいいぞ。さすがに店では出せんがな」

「どこならいいんだ?」

「町もダメだなー……学園の演習場にでも行くか? そこなら自由だ」

あのコロシアムか……

「入っていいのか?」

「問題ないな。休みの日や放課後に使っている生徒もいる」

「よし、俺が買ってしまう前に学園に戻ろう」

あそこにあるトライデントとかすげー欲しいもん。

「そうだな」

「そうした方が良さそうだね」

俺達は帰ることにし、店を出る。

そして、魔法陣に乗り、学園に戻ると、演習場に向かった。

「誰もいないな」

演習場にいるのは俺達だけだ。

「気兼ねなくていいだろ。ケンカになることもあるしな」

「まあ、それもそうか。剣くれ」

「ほらよ」

フランクが剣を取り出したので受け取る。

「おー……思ったより軽いなー」

もうちょっと重いかと思った。

「初心者用の剣だからな。振ってみ?」

フランクに言われたので鞘から剣を抜くと振ってみる。

すると、ビュンッという音がした。

「こんな感じか?」

「おー、すごいねー」

「うーん、振りは速いんだが、剣が棒に見える……」

セドリックは褒めてくれたが、専門家のフランク的にいまいちっぽい。

「ダメか?」

「多分、それだと剣が折れるな。相手も死ぬとは思うけど……」

うーん、ダメかー。

「フランク、お手本を頼む」

そう言って剣をフランクに返した。

「まず、構えがこう」

フランクは腰を少し落とし、剣を立てる。

「雰囲気あるな」

「強そうだよね」

フランクを見た俺とセドリックが頷き合った。

「なんか恥ずいな」

「気にするな」

「続けて、続けて」

俺達が急かすと、フランクが剣を振る。

フランクの振りは鋭く、綺麗な筋が見えた気がした。

「こんな感じ」

「俺と比べてどうだ?」

セドリックに聞く。

「素人目に見ても全然違う。君は無駄が多い感じ」

そっかー。

「よし、フランク。かかってこい」

指でちょいちょいと誘う。

「お前、なんでそんなに戦いたいの? 普通、剣を持っている奴に言うか?」

「演習だよ、演習。ここでは死なないどころか傷も付かないんだろ? いける、いける」

「ったく……手加減しねーぞ」

フランクが剣を構えた。

「2人共、ちょい待ち。誰か来たよ?」

セドリックが止めてきたので入口の方を見ると、黒髪の女生徒が立っていた。

「あ、ユイカじゃん」

「風邪、治ったんだね」

ほう……

あれが期待値マックスになっている赤羽の子か。

さて、どれくらいバカなんだろうか?

お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。

よろしくお願いします!



Tip: You can use left, right, A and D keyboard keys to browse between chapters.